在庫の処分による処分損・廃棄損を計上して節税をする3つの方法

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決算対策の中で、条件がそろえば優先してほしい節税の1つが「在庫の処分による処分損を計上すること」です。

決算対策では現金を使わずに、損金を作り、現金(流動資産)の比率を高めて資金繰りを改善できることが理想です。

この記事でご紹介する「在庫の処分による処分損を計上すること」はまさに現金を使わずに損金を作ることが可能な手段です。

ここからはこの「在庫の処分による処分損を計上すること」を3つの方法に分けてご説明していきます。

決算書上、棚卸資産や貯蔵品という勘定で処理されている資産について、いわゆる「損切り」を行うことで損金を増やすことが出来ます。

この在庫の処分によって節税になる仕組みは利益の仕組みの理解から始まります。

粗利益=売上-売上原価

当たり前の話ですが、利益は売上原価を上げることで少なくなりますので、結果的に支払う税金が少なくなり、節税につながります。

そして、次に売上原価の数字を上げるには在庫を処分することで可能になります。

売上原価 = 期首棚卸高 + 当期仕入高 - 期末棚卸高

この式でわかるように、「期末棚卸高」=「在庫」を処分して0にすることで、売上原価の数字は上がります。

ここからは、在庫を減らす3つの方法に関してお伝えしていきます。

1.決算セール・ディスカウント販売

よく決算セールという言葉は聞きますが、これは決算期に在庫をディスカウントして販売して在庫を処分していることです。

例えば、在庫の仕入れは100万円、その在庫を30万円で販売をすれば、現金30万円が会社に残り、在庫もなくなるため、売上原価を上げて利益を少なくして、節税となります。

2.在庫の評価損

商品評価損とは、売れ残りの在庫について評価損失という損金を発生させる処理です。在庫(棚卸資産)の評価方法には、原価法と低価法の2つがあります。

原価法はさらに以下の6つに区分されます。

  1. 個別法
  2. 先入先出法
  3. 総平均法
  4. 移動平均法
  5. 最終仕入原価法
  6. 売価還元法

低価法は、期末棚卸資産の種類ごとに、取得価額と期末の時価とを比較して、低い方の金額を選択できますので、原価法に比べて有利です。

低価法の評価損を損金に計上するうえで、「適正な時価」が問題となります。

この「適正な時価」は事業年度で在庫がいくらで売却できたかが証明の1つとなります。
したがって、決算セール・ディスカウント販売を行うことで、「適正な時価」の目安がわかり、その証明にもなります。
そして、決算セール・ディスカウント販売で売れ残った在庫に関しては、低価法によって評価損を計上することがしやすくなります。

棚卸資産を売却した際の仕訳の例は以下のとおりです。

例)20万円の棚卸資産を決算セールにて5万円で販売し、在庫処分をした。

A.在庫をディスカウントして処分したと解釈すれば

(借)現預金 50,000
(借)商品廃棄損(特別損失)150,000/(貸)棚卸資産200,000

B.在庫をディスカウントして売り上げたと解釈すれば

(借)現預金 50,000/(貸)売上 50,000
(借)仕入(売上原価) 200,000/(貸)棚卸資産 200,000

3.在庫の廃棄

売れない在庫を抱えても維持費がかかります。

したがって、その在庫を廃棄するという選択肢が出てきます。

仕訳はいたってシンプルで、以下の通りです。

棚卸廃棄損10万円/棚卸資産10万円

また、在庫を廃棄する場合は、その証明書が必要となります。

証明書とは稟議書、マニフェストや廃棄処分した不良在庫の写真など、第三者から見ても廃棄したことが客観的にわかる資料です。

証明に有効とみなされる可能性のある資料5つ

  • 廃棄に関する記載がある取締役会議事録
  • 社内ルールに基づいた稟議書
  • 名称、購入時期、購入金額が記載された廃棄棚卸資産のリスト
  • 廃棄業者への引き渡し時の写真
  • 廃棄業者からの請求書

なお、在庫をどこか恵まれない国などに寄付する場合は、当然ですが寄付金になります。寄付金というのは必ず損金になる訳ではありませんので、注意が必要です。

また、これはもってのほかですが、帳簿を操作して在庫を減らす、あるいは在庫を処分したことにして自宅に保管するなどを行うと脱税となり、重たいペナルティを背負うことになります。

まとめ

在庫の処分による節税は、在庫の決算セール・在庫の評価損・在庫の廃棄の3つです。評価損や廃棄では、その時価はいくらなのかということが問題となります。そこで、決算セールで時価を証明するということが大切なステップとなります。

また、評価方法には大きく2つあり、細かく分類すると7つの評価方法があります。在庫の評価方法は、しっかりと顧問税理士さんに相談し適切な計算をしてもらいましょう。

加えて、在庫処分を偽装した場合は、重いペナルティもありますので、当然ながら脱税のような行為はしないよう心掛けてください。

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