節税研究会のモットーは、
①法人・個人のキャッシュを増やすこと
②銀行からの評価を高めること
この2つの視点で節税を行うことです。
節税をすることで利益が減少するので、資金繰りに困ったときに銀行から借り入れができなくなってしまうかもしれない。そんな不安を抱えながら節税をしてほしくありません。
そこで、銀行の評価が高まり、法人の税金を軽減させながらも借り入れで有利な条件に持ち込めるような節税手法をご紹介していきます。
1、銀行の評価(スコアリング)とは
スコアリングとは、各金融機関が設定している評価基準でつける会社の点数です。
この点数は決算書をもとに計算されます。
銀行からの融資は、銀行との付き合いなどで決まるのでは?と考えている方もいるでしょうが、実態は全く異なります。
基本的にはこのスコアリングの点数が一次評価で使われ、融資枠や金利条件の大枠が決まってしまいます。
第二次評価では、決算書以外の要素について評価します。
・経営者の能力や人物
・過去の返済履歴
・経営計画
・メディア出演など
ただし、第二次評価で評価が大幅に変更されることは稀なことです。
第三次評価では、返済潜在力を評価します。
不渡り手形、回収不能売掛金、換金不能な不良在庫、貸付金の回収不能分、土地や有価証券の含み損はマイナス評価します。
逆に土地に含み益、経営者やその関連企業に資産余力があれば、プラスに評価します。
よって、このスコアリングの一次評価で高い評価を得られなければ、あとは三次評価の細やかな加点に頼るほかはないのです。(しかし実際はこの三次評価は非常に難しく、結果的に関連企業や身内の会社で融資を受けて、それをまた貸しするケースが散見されます。)
逆に、スコアリングの評価がいいと「低い金利で、迅速に」融資を受けられます。
2.スコアリング評価の仕組み
金融機関が行う企業格付は、「定量評価」と「定性評価」で行われます。
(1)定量評価
1、安全性
・10点 自己資本比率=自己資本÷負債・資本合計
・10点 ギアリング比率=有利子負債(長・短期借入金+社債)÷自己資本
・7点 固定長期適合率=固定資産÷(固定負債÷自己資本)
・7点 流動比率=流動資産÷流動負債
2、収益性
・5点 売上高経常利益率=経常利益÷売上高
・5点 総資産計上利益率=経常利益÷総資本
・5点 収益フロー⇒何期連続か、経常利益はいくらか(100万円未満は0点)
3、成長性
・5点 計上利益増加率=(今期経常利益・前期経常利益)÷前期経常利益
・5点 自己資本額
・5点 売上高
4、返済能力
・5点 債務償還年数=有利子負債÷(営業利益+減価償却費)
・15点 インタレスト・カバレッジ・レシオ
=(営業利益+受取利息+受取配当金)÷(支払い利息+割引料)
・20点 キャッシュフロー額=営業利益+減価償却費
経営者目線のキャッシュフロー=税引き後純利益+処分損+減価償却費
経営者目線のキャッシュフローは、銀行のキャッシュフローとは異なり、実際の現金がどのくらいあるかですが、銀行は営業キャッシュフロー(本業で利益を作りだす力)を中心に査定を行います。
では、銀行の評価を高めるにはどうすればよいのか。
もちろん満遍なく数値を高められればいいのですが、それでは身もふたもない話です。
イメージでは、2と3の収益性と成長性が高ければ融資でよい条件になりそうだと考えるかもしれませんが、実際の点数配分をみると、1,4の安定性と返済能力のほうが点数配分が高いのです。
それは結論から申し上げると上記の計算の太字部分の数値を上下すればいいのです。
3、スコアリングを上げる方法
- 有利子負債(長・短期借入金+社債)を下げる↓
- 営業利益+減価償却費の数値を上げる↑
- 営業外費用あるいは特別損失で経常利益を下げる↓
まず、有利子負債(長・短期借入金+社債)を少なくします。つまり借入金は最優先で返していかなければ評価は上がりません。
そして、営業利益+減価償却費の数値は高めます。営業利益を上げるのは大変ですが、減価償却費を作るのは可能です。
ここで、お気づきかと思いますが、「減価償却費を高めること」が法人税を軽減し、銀行評価を高められる手法なのです。
では減価償却が作れなければ、銀行評価を下げるしかないかというとそうではありません。
減価償却を高めるわけではなく、営業利益を減らさない方法で節税を行えばいいのです。
利益の計算は以下のようにされます。
売上総利益 = 売上高 - 売上原価
営業利益 = 売上総利益 - (販売費 + 一般管理費)
経常利益 = 営業利益 + 営業外収益 - 営業外費用+特別利益-特別損失
よって、営業利益を下げないようにするには、営業外費用あるいは特別損失で経常利益を下げて、法人税の節税を行います。
○営業外費用・特別損失を増やす節税
・含み損のある固定資産の一括償却
・売掛金・受取手形の貸し倒れ損失の計上
・含み損のある有価証券を売却
・ゴルフ会員権などの評価損の計上
次回の記事では、減価償却を増やす方法と営業外費用・特別損失を増やす方法を具体的に解説していきます。
まとめ
銀行の評価を高める、あるいは下げないようにして節税をするには、スコアリングの安定性と返済能力の点数を上げる必要があります。返済能力を高めるには営業利益を下げないようにすることと減価償却を高めることが大切です。
つまり、減価償却費を上げるあるいは営業外費用・特別損失で損金を作り、営業利益を下げずに経常利益を軽減することで、銀行評価を下げずに節税をすることができます。