前回の記事「銀行評価を下げずに節税できる減価償却費を増やす具体的な3つの方法」では、銀行評価を下げずに節税をするために減価償却費を大きく計上する方法をご紹介しました。
「会社の売り上げを上げて利益は上げたい、でも税金は払いたくない。」と経営者の方であれば皆さん同じようにお考えなのではないでしょうか。
実は、本業の利益=営業利益を上げると銀行の評価は上がりますので資金繰りがよくなります。そして、法人税の課税対象となる経常利益は下げても銀行評価に影響が出ません。
ではどうすれば営業利益を上げながら経常利益を下げられるのでしょうか。
その結論は、「営業外費用・特別損失」を増やすことです。
今回の記事ではこの「営業外費用・特別損失」を増やす3つの方法を具体的に解説していきます。
最後に、あまり世間では知られていないテクニックもお伝えしますので是非最後までご覧いただければと思います。
1、営業外費用・特別損失とは
営業外費用も特別損失とは、本業以外で生じる損失のことで、営業利益の次に表示される費用の区分です。
営業利益の構成要素ではなく、会社のビジネス活動とは別の活動に要した費用ということになります。
営業外費用の科目として代表的なのが支払利息です。金融機関等から借り入れを行った場合に支払う利息はこの支払利息に計上されます。その他、為替差損や雑損失などの科目があります。
【営業外費用の科目】
- 支払利息
- 手形売却損
- 社債利息
- 社債発行費償却
- 社債発行差金償却
- 新株発行費償却
- 創立費償却
- 開業費償却
- 貸倒引当金繰入額
- 貸倒損失
- 有価証券売却損
- 有価証券評価損
- 売上割引
- 寄付金
- 原材料評価損
- 雑損失(雑損)
一方で、「特別損失」は重要性のない場合に限り、営業外費用として処理することも認められています。
会計上は費用として認められないが、税法上の特典を受けるために費用処理しなければならないものも特別損失に計上することになっており、営業外費用と特別損失の判定は少し難しい場合があります。
特別損失の科目として代表的なのは「固定資産売却損」や「役員退職金」で、決算書上で現れるのは非常に少ない項目で、営業外費用と比較しても珍しい勘定科目であるのがわかるかと思います。
【特別損失の科目】
- 前期損益修正損
- 固定資産売却損
- 固定資産除却損
- 投資証券売却損
- 有価証券強制低価評価損
- 火災損失
- 災害損失
- 役員退職金
- 投資損失引当金
- 盗難損失
- 社債償還損
これらの「営業外費用・特別損失」を増やしていく方法をここからは具体的にご紹介していきます。
2、「営業外費用・特別損失」を増やす3つの方法
上記で列挙した営業外費用や特別損失ですが、どのようにすれば増やすことができるでしょうか。
ここでは3つの方法と1つテクニカルな手法もご紹介していきます。
1つ目:会社の埋蔵金を処分する
設立して間もない法人ですとあまりないかもしれませんが、ある程度長く会社を経営していると昔法人で購入した「株」「債権」「ゴルフ会員権」「活用していない不動産」などがあるかもしれません。
実はこれらの資産はバブルに購入している場合が多く、たくさんの含み損を抱えている可能性があります。
これらを思いきって売却をすることで、有価証券売却損・固定資産売却損が発生し、営業外費用・特別損失を計上することができます。
まずは会社にあるこのような資産がないかをチェックしてみましょう。
2つ目:不良債権を処理する
1つ目は会社の資産の評価損を処分する方法でしたが、2つ目は会社が抱える不良債権を処理してしまうことです。
建設業ではよくある見受けるパターンなのですが、売掛金の回収がなかなかできなかったり、取引先が倒産してしまったりで、売り上げ金が回収できないケースです。
中には悪質な業者と取引をしてしまい、一切連絡が取れなくなってしまったり、裁判までしますが、裁判で買ってもその業者は破たんしてしまえば回収ができなくなったりということもあります。
回収が困難である場合には、思い切ってその不良債権を切ってしまうことで、貸し倒れ損失などの営業外費用を計上することもできます。
3つ目:退職金を支給する
3つ目は1つ目と2つ目とは違い、キャッシュが必要となりますが、役員に退職金を支給してしまうことです。退職金は支払う法人も受け取る個人も税金のメリットが非常に大きくなっています。(退職金に関しては今後の記事で詳細を書いていきます。)
よって、退職金を受け取ってしまうことが大切です。
一般的には、「退職金を受け取る時期の月収×勤続年数×3倍」の金額を退職金で設定する場合が多いです。
例えば月収100万円、勤続年数20年とすると、会社は100万円×20年×3倍=6000万円を退職金として損金(特別損失)として計上できますし、個人も800万円までは非課税で受け取ることができ、かつ残りの半分(6000万円-800万円)×1/2=2600万円だけにしか所得税が課税されません。給与で受け取った場合の半分以下の所得税で済んでしまいます。
ここで大切なことは、一度退職をしても会長や相談役で継続して働くことは可能です。ただし、経営に携わっていると見た目だけの退職だととらえられてしまいますので、経営はほかの役員に任せましょう。
ちなみにこの場合、会長や相談役で継続して働いて本当に退職をするときにはもう一度退職金を受け取ることができます。退職金は2度おいしい、そして2回おいしい制度なのです。
最後に、1つのテクニカルな技も紹介します。
テクニカル技:生命保険や倒産防止共済などの掛け金を「雑損失」にしてしまう
法人で積み立て機能のある保険で損金計上できる商品に加入していることはよくあることです。
以下のような商品です。
- 長期平準定期保険
- 逓増定期保険
- 定期保険(全額損金算入)
- 倒産防止共済(経営セーフティ共済)
このような商品に加入している場合は掛け金の全額あるいは1/2を損金計上することができます。
この損金算入の勘定科目は一般的には「支払い保険料」として一般管理費の項目で落とします。
これは何を意味するかというと「この保険料は本業で必要な費用とみなす」ということです。
これでは、本業の利益である「営業利益」が減少して銀行の評価はダウンします。
そして、ここでもう1つ不思議なことは、この保険を解約して解約返戻金を受け取ると雑収入が発生するのです。雑収入ですので、本業の儲けにはなりません。
ちょっとおかしいですよね。本業で必要な経費として計上しているのに保険金や解約返戻金がいざ発生すると営業外の収益として計上されてしまうのです。
なので、もし上場企業や上場を目指す企業でないのであれば、こう考えてみましょう。
この保険は保障よりも将来の退職金準備のための積み立てとしての金融資産である。あるいは目的はないがもしものときの緊急予備資金として保険会社で運用をして積み立てている定期預金のようなものである。
こう考えると、この保険の掛け金の保険料は、本業ではない部分での投資での損失であるととらえることもできます。
結論としては、このような保険の掛け金は「雑損失」として損金計上してしまいます。すると銀行評価は下がらずに保険で積み立てを行うことができるのです。
これはテクニカルな話ですし、掛け捨ての保険で備えている場合には活用できませんので、ご注意ください。
まとめ
営業外費用や特別損失は、本業の儲けとは関係のないところで発生する損失のことで、その損失は銀行の評価には影響しません。
営業外費用や特別損失を増やして経常利益を下げることは、銀行評価をキープしながら節税できる非常に有効な手段です。
営業外費用や特別損失を多く計上するには、①会社の埋蔵金を処分すること②会社の不良債権を処分すること③退職金を支給することの3つです。
そしてテクニカルな手法としては倒産防止共済や生命保険の掛け金を雑損失として計上することです。(非上場企業に限る)
これらの手法で活用できるものがあれば、銀行評価をキープしながら節税ができますので、会社で実行できるものがないか、一度確認をしてみましょう。
ただし、当たり前のことですが、節税は損をすることとは違いますので、営業外の費用や特別損失を増やすためにわざと投資で損をするようなことはしないようにしましょう。