30万円未満の備品の一括償却による節税・3つの条件と注意点

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皆さんは、平成30年3月31日までに30万円未満の備品を購入することで、その資産を一括償却できることをご存知でしょうか。

利益が出て、節税を検討するときにまずは会社経営上必要な経費で決算対策を行えないかを考えますよね。

ただし、その備品が会社にとって必要なものであっても、経費にできなければ会社からキャッシュは減り、税負担は軽減しないので節税にはなりません。

しかし、「中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例」を活用することで、取得費用が30万円未満であれば一括でその費用を償却することが可能です。

この記事では、30万円未満の備品の一括償却による節税の3つの条件と注意点についてわかりやすく解説していきます。

1.30万円未満の備品の一括償却による節税の3つの条件

30万円未満の備品を一括償却するには、以下の3つの条件を満たしている必要があります。

  1. 中小企業であること
  2. 青色申告者であること
  3. 平成30年3月31日までに備品を取得していること

それでは、1つずつ解説していきます。

1.中小企業であること

<「中小企業者等」の範囲>

以下のような、法人・個人・組合が該当します。

〇法人

  • 資本金が1億円以下の法人(ただし、大規模法人の子会社は除かれます)
  • 資本を有しない法人のうち、常時使用する従業員の数が1000人以下の法人

〇個人

  • 常時使用する従業員の数が1000人以下の個人

〇組合

  • 中小企業等協同組合、農業協同組合など

2.青色申告者であること

青色申告者は事前申請と帳簿の提出が必要な代わりに、事前申請+簡易簿記の提出で10万円の特別控除、事前申請+複式簿記の提出で65万円の控除が受けられるうえ、ほかにも多くの課税対象額削減のための特典が受けられます。

参考:個人事業者と法人の、青色申告の違い

個人事業主と法人の違いについても整理しておきました。

  個人事業者 法人
赤字の繰越期間 3年 9年(※)
期限後申告による取消し要件 ない 2回連続期限後申告で取消し
届け出期限(原則) 青色申告の承認を受けようとする年の3月15日 青色申告によって申告書を提出しようとする事業年度開始の日の前日まで
初年度の届け出期限 業務を開始した日から2か月以内 設立の日以後3月を経過した日と当該事業年度終了の日とのうちいずれか早い日の前日まで

※ 平成30年4月1日以後に開始する各事業年度において生じた欠損金額については10年。

 3.平成30年3月31日までに備品を取得していること

対象となる資産・備品は、取得価額が30万円未満の減価償却資産です。

その資産を平成30年3月31日までに取得しておかなければ、一括償却はできません。

せっかく節税・決算対策のために備品を購入したのに、期限に間に合わなかった・・・というようなことがないようにしっかりと計画を立てておきましょう。

また、この資産・備品とは、器具及び備品、機械・装置等の有形減価償却資産のほか、ソフトウェア、特許権、商標権等の無形減価償却資産も対象となります。

加えて、所有権移転外リース取引に係る賃借人が取得したとされる資産や、中古資産であっても対象となります。

30万円未満の備品の一括償却による節税の注意点

30万円未満の備品の一括償却による節税の注意点は以下の3点です。

  1. 一括償却できる資産の合計は300万円
  2. 特例に関する明細書の添付
  3. 備品の価格は税込みか税抜きか

それでは1つずつ説明しておきます。

1.一括償却できる資産の合計は300万円

30万円未満の備品の一括償却による節税はとても優遇されている制度ですが、やはり上限金額があります。

それは、一括償却を行う事業年度における取得価額の合計額が300万円に達するまでの取得価額の合計額が限度となります。
加えてご注意いただきたいのは、事業年度が1年に満たない場合には300万円を12で除し、これにその事業年度の月数を掛けた金額が上限となります。

2.特例に関する明細書の添付

30万円未満の備品の一括償却を行うために、「中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例」の適用を受けるには、法人税の確定申告書に『別表十六(七)少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例に関する明細書』を添付する必要があります。

明細書PDF:別表十六(七)少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例に関する明細書

また、この特例では、租税特別措置法上の特別償却、税額控除、圧縮記帳との重複適用はできません。

したがって、取得価額が10万円未満の備品や20万円未満の備品で適用される一括償却資産の損金算入制度の適用を受けるものについてもこの特例の適用とはなりません。

明細書の添付ではしっかりとその制度の違いを把握して申告する必要があるということです。

申告の詳細に関しては顧問税理士に任せていただくのが一番間違いがないでしょうか。

3.備品の価格は税込みか税抜きか

少額減価償却資産の取得価額の判定は、消費税の会計処理によって異なります。

消費税の会計処理は2種類存在します。

  • 税込経理方式:会計上記載する数字はすべて税込みで処理する方式
  • 税抜経理方式:会計上記載する数字を商品そのものの価格と消費税で分けて処理する方式

この点は顧問の税理士さんへ確認をしていただければすぐにどちらの会計処理方式かはわかります。

例)税込31万3200円(税抜価格29万円)のパソコンを購入した場合

税込経理方式の場合:31万3200円

税抜経理方式の場合:29万円

つまり、30万円未満の備品の一括償却を行うために、「中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例」を受けるためには、税抜経理方式の方がより多くの資産を償却できることになります。

逆を言えば、この違いを理解していないために、税込経理方式で計算していた法人で、例の税込31万3200円のパソコンを購入しても一括償却ができないということになってしまいます。

したがって、この制度を活用して30万円前後の備品購入を検討されている場合は、必ず会計処理で税抜経理方式か税込経理方式かを確認してから最終決定を行うようにしましょう。

30万円の備品といえど、上限の300万円分購入した場合には、特例が適用できるかできないかで、収める税金が100万円ほど変わってきてしまうのですから。

まとめ

今回の記事では、30万円未満の備品の一括償却による節税の3つの条件と注意点について説明しましたが、お役に立てましたでしょうか。

3つの条件

  • 中小企業であること
  • 青色申告者であること
  • 平成30年3月31日までに備品を取得していること

3つの注意点

  • 一括償却できる資産の合計は300万円
  • 特例に関する明細書の添付
  • 備品の価格は税込みか税抜きか

合計6つのポイントを押さえて、この制度を活用すれば、節税・決算対策としてはとても有効な手段となりえますので、平成30年3月31日までの節税・決算対策として、是非ご検討ください。

また、当然のことですが、会社の経営上、本当に必要な備品だけを購入しなければ、無駄な経費となってしまいますので、目先の節税・決算対策だけにとらわれないようにしてください。

あくまで節税・決算対策は、法人・会社の資産を結果的に増やして、会社経営・従業員さんを守るために行うものなのですから。

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