在庫の処分による処分損を計上することで節税を行う3つの方法

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • Pocket
  • LINEで送る

経営者の皆さんは、会社に当面販売の見通しの経っていない在庫を所有してはいませんか。

決算対策を行う上で、なるべく資金を使わずに損金を計上したいと考えている経営者の方は多いですが、まさにこの「当面販売の見通しのない在庫」を処分することで、それが実現できます。

ただし、在庫の処分には3つの方法がありますので、それを1つ1つ具体的に説明していきます。

  1. 決算セールによる在庫の処分
  2. 商品評価損による損金計上
  3. 商品の廃棄による在庫の処分

1.決算セールによる在庫の処分

決算セールとはスーパーや量販店などでよく見かけるものですが、要は値引き販売のことです。
節税対策が必要な状況になり、現在の価格では完売が難しいという経営上の判断をしている状況だとすれば、そのタイミングで決算セールを検討することをおすすめします。

決算セールという選択肢を取るということは、在庫をなくすことを最優先に考えていただきたいと思います。

原価3万円の商品を本来は10万円で販売しているところを2万円で販売することで、1個あたり1万円の損失を計上することができます。

ただし、ここで気を付けていただきたいのは、本来10万円で販売している商品が決算までに販売しきることができるのであれば、税金で30%を持っていかれたとしても会社に資産が残りますので、安易に決算セールという選択肢を選ぶ必要はありません。

加えて、決算セールを行うことでブランディング効果が低下する、つまり翌期に同じような商品を購入するお客様が通常の値段では高いと感じて本来の売り上げの調子を崩してしまうかもしれません。

このようのないように、計画的に、そして戦略的に決算セールによる在庫の処分は行うようにしましょう。

2. 商品評価損による損金計上

商品評価損とは、売れ残りの在庫について評価損失という損金を発生させる処理のことです。

1の決算セールによる在庫処分の話をしましたが、決算セールを行うのは商品評価損の計上を行うためのステップ1となっています。

低価法の評価損を損金に計上するうえで、「適正な時価」を考え、2018年1月現在ではその決算期末のその棚卸資産を売却するものとした場合に売却時価となっています。

決算セールでの価格を目安として時価を設定すれば客観的な情報が得られるため、税務署に対してもしっかりと説明ができる根拠となりえます。

在庫の商品評価損を正当に計上するためのステップ1として決算セールを実行し、売れ残った本来の在庫に関しては低価法による評価損を計上することで、節税が実現できます。

3.商品廃棄による在庫処分

決算セールに出しても売れず、あまりに低価格で販売することでブランディング効果を低下させる価値を損ねる可能性がある場合は、商品を廃棄してしまうという選択肢をとっていただくことになるかと思います。

在庫品を本当に廃棄して処分を行う場合には、商品を廃棄したという証明書が必要となります。

この在庫の処分損を証明できるように(税務調査で対応できるように)、廃棄の事実と時期のエビデンスとして「マニフェスト(産業廃棄物業者が発行する廃棄証明書)」を取っておきましょう。

ただし、在庫処分をする予定の商品を寄付するという選択肢もありますが、寄付金が損金計上されるのには、また別に考慮しなければ損金計上ができなくなってしまうため、注意が必要です。

参考:在庫の処分による処分損の計上で節税を行うにあたっての注意点

  • ブランディング効果を下げて、翌期からの売り上げに悪影響を及ぼしてしまう

先述のとおり、在庫を安易に安く販売してしまうとブランディング効果が下がってしまいます。

例えば、ポルシェやベンツなどの高級車やプラダやディオールなどの高級アパレルブランドが原価以下の値段で値引きセールを行っていたら「偽ものではないか」「こんなに安く購入できるものなのか」など、今後の会社のブランド価値を損ねてしまいかねません。

  • 原価以下で決算セールを行わなければ、損金計上(節税)はできない。

在庫を捨てる、つまり在庫を廃棄しなければ基本的には節税にはなりません。

なぜなら、売上から販売した商品の原価を引いた金額が粗利益となるためです。

売上-期首在庫+当期仕入-期末在庫=粗利益

⇒粗利益-必要経費=営業利益⇒営業外損益が0の場合はそのまま経常利益

⇒経常利益×法人実効税率=法人税 となります。

販売する=在庫が減る=利益が多くなります。

決算前に、今後販売できる予定のない商品を仕入れ原価より低い金額で販売しなければ損金を計上することはできませんので、節税にはなりません。

むしろ、値段を下げて販売したことで多くの商品を売り切ってしまい、予定よりも多くの利益を計上してしまう可能性もありますので、値段設定はしっかりと確認をしましょう。

  • 在庫の評価損を行うには、決算セールの価格設定が必要

評価損による損金計上を行うには、決算セールでの値段が時価としての計算の根拠となります。

決算セールなどを行わなければ、根拠のない評価下げだと判断されてしまい、評価損を計上できない可能性もあります。

  • 在庫の廃棄による在庫処分にはエビデンスが必要

在庫処分での処分損は、その証明・エビデンスが必要となります。

そうでなければ、本当に廃棄をしていても、税務調査ではその損金の根拠を疑われてしまいます。

  • 一番大切なのは、経営者が在庫の処分を決断すること

在庫の処分による節税ができないケースは、経営者が在庫をいつまでも処分する決断ができないということです。

私が影響を受けているコンサルタントの1人に「ICOコンサルティングの井上和弘さん」という方がいます。

その方の著書に「儲かる会社をつくるには赤字決算にしなさい—会社にお金を残す32のコツ」という本があり、この中でも在庫の処分を決断することで、資金繰りを改善し、財務体質を強くするのには在庫処分の決断が大切だと書かれています。

経営者の方には、是非販売が今後難しいと判断できるものは勇気をもって在庫処分をしていくことをおすすめします。

まとめ

今回は在庫の処分による処分損の計上で節税をする3つの方法をご紹介しました。

在庫の処分には3つの方法があり、決算セール・商品の評価損の計上・在庫の処分(廃棄)で節税を行うことが可能です。

ただし、在庫の処分による節税には、決算セールの場合にはブランディング低下のリスクがあり、商品の評価損を計上するためには決算セールなどでの時価を根拠に数値設定しなければ否認されるリスクがあり、商品の処分(廃棄)を行うには、エビデンスとして「マニフェスト(産業廃棄物業者が発行する廃棄証明書)」を取得していなければ、廃棄の事実を税務署から疑われてしまうリスクがあります。

また、もっとも大切なのは経営者が在庫を処分するという判断ができるかどうかです。

もちろん在庫を何でも処分することが正しい経営判断とは限りませんが、資金繰り改善を行うためにも在庫の処分を1つ検討に入れてほしいと思います。

この記事に寄せられた質問

質問在庫の処分に関わる仕訳

「取引先が当初の予定より早期に契約終了となったため、余剰在庫分を弁済してもらった。(原価×個数)その場合の仕訳が知りたい。(製品は納入していないが、廃棄相当の金額も受領。)廃棄損を立てなくてはならないのでしょうか?原価で買い取ってもらったと同様と考え、売上、売上原価計上ではいけないのでしょうか。」

節税研究会からの回答

今回のケースでは取引先が当初の予定より早期に契約終了となっているため、キャンセル料とみなして消費税非課税取引を行います。
仕訳:現金/雑収入
在庫は引き渡ししていませんので、そのままです。

私たちは顧問税理士業務をしているわけではありませんので、責任は負えませんが、ひとつの考えを提示することはできますので、なにかございましたらお問い合わせください。
また、ブログ内容や返信内容に誤りがある場合には、ご指摘ください。

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • Pocket
  • LINEで送る

~お問い合わせ~

趣味でサイトを運営しておりますので、お問い合わせ対応は迅速ではありません。
サイト内の記事に誤った内容などがありましたら、大変お手数ではございますが、
info@setsuzei-kenkyukai.com」までご連絡ください。

お問い合わせフォーム


内容をご確認いただき、よろしければチェックボックスをチェックして、送信ボタンをクリックしてください。

SNSでもご購読できます。