2019年4月11日の法人保険(節税保険)に関する国税庁のパブリックコメント3つのポイント

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2019年4月11日に国税庁より、法人保険に関するパブリックコメントが発表されました。概要については、以下の通りとなっています。

原文は【 2019年4月11日のパブコメ 】で確認ができます。

法人契約の定期保険の損金算入割合を変更

法人を契約者とし、役員または使用人を被保険者とする、保険期間3年以上の定期保険、第三分野保険

(改正案) 保険期間開始~一定期間
  ・ピーク時の解約返戻率が50%以下:全額損金扱い 
  ・   〃  50%超70%以下:60%損金扱い
  ・   〃  70%超85%以下:40%損金扱い
  ・   〃  85%超:ピーク時の解約返戻率の9割が資産計上

いずれも保険期間の4割にあたる期間での損金の扱いです。保険期間の4割を超える期間(後半6割)の経理処理は前半4割期間で資産計上された保険料分も損金処理するため、100%を超える損金処理を行うケースも出てきます。

最重要◎既契約への遡及はなし

*上記内容は、正式な通達が出されるまで確定されたものではありません。通達は2019年5月を予定しているようです。

今回の国税庁のパブコメの内容は複雑な面もあるため、3つのポイントに絞って解説します。


1.過去遡及はしない

通達が出る日まで、(販売ベースでは2019年3月まで)に加入した法人保険に関しては今まで通りの仕訳処理が行われる予定です。

したがって、今までに加入した法人保険はこれから加入する法人保険よりも同じ内容でも損金に算入できる割合が大きくなりますので、事情がない限り大切に継続をすることをおすすめします。

2.今までの全損定期保険は40%損金に

 今まで節税保険として販売されてきた全額損金扱いの定期保険は解約返戻率は加入後7~10年後に80%前後ありました。被保険者が35歳未満では90%を超える設計も可能でしたが、多くは返戻率80%前後の設計でした。

つまり、今まで販売されてきた全損的保険を今後加入しても損金算入は保険料の40%にしかなりません。

今回の損金算入率の考え方は「実態に即している」ことが前提です。

これは保険料の計算に起因しています。保険料は加入期間のリスクを平均して決定しますので、保険加入当初は保険期間の最後よりも割高な保険料を支払っていることになります。

この割高な保険料を解約返戻金(責任準備金)として将来の保険金支払いのために積み立てられていくという仕組みで商品設計がなされています。

したがって、この将来の保険金支払いのためにしはらった保険料のうち、割高な部分の保険料は損金にせず、資産と見なして資産計上するという実態に即した経理処理のルールに変更するということです。

3.掛け捨ての保険、期間の短い保険は今までどおり

今回の改定は解約返戻率に焦点を絞って改正を行うものです。

解約返戻金のない保険、あるいは解約返戻金が発生しても解約返戻率50%未満の保険に関しては、今までどおり全額を保険料として損金処理を行えます。

また、保険期間が3年未満の保険契約も今回の改定には影響はありません。

今後の保険会社の動き

今回国税庁が発表したパブコメは今までのケースでは、そのまま通達になっています。したがって、今回の改正ルールにしたがって、保険商品を開発していくことになります。ここで節税研究会で勝手にこんな保険が出てくるのではないかという予測をしてみたいと思います。

予測1.解約返戻率70%に配当金を加えて、保険料の85%が契約者に返戻される60%損金保険

今後の主流は、返戻率は70%以下でそこに配当金を加えることで、契約者には保険料の85%程度は返戻できる決算対策保険が出てくると予想します。この保険設計が得意な保険会社は、やはり日本生命ではないでしょうか。昔から予定配当金として設計書にも載せてきた会社ですから、このような配当金で契約者に還元する保険を作るのはお手の物でしょう。

もともとプラチナフェニックスという全額損金の定期保険を販売していた決算対策保険の火付け役は日本生命です。災害保障をメインとした設計のため加入もしやすく、まさに決算対策のためだけに開発された法人保険と考えてよいでしょう。

この保険を開発した日本生命は、第一生命と子会社のネオファースト生命で販売をしていた全損保険のシェアを止めるためにも、今回国税へリークしたのではないかという噂があります。

これも、この改正によって、得意の配当金を活用した法人保険を販売できるということも考えていたのではないかと疑っています。

予測2.解約返戻率85%で配当金を加えるか、三大疾病保障などの保障を充実させた長期平準定期保険を40%損金算入の法人保険として販売

損金割合は40%なので、損金の魅力は落ちてしまいますが、今までの長期平準定期保険は50%損金(1/2損金)なので、損金割合は10%しか下がっていません。

ここで配当金をのせて、実際に契約者へ100%程度返戻する法人保険を作ることで、今までのような長期平準定期保険の販売が可能となります。

また、ソニー生命のリビングベネフィット(三大疾病・障害介護保障付きの定期保険)のように、死亡保障以外の保障を充実させた長期平準保険を販売することで、解約返戻率は85%以下ではあるが、40%損金で長期の保障と積み立てを手に入れることができるという設計の法人保険です。

このような保険は配当金を出すことが難しい株式会社の保険会社が設計していくのではないかと思います。日本生命のように相互会社の保険会社であれば、配当金を出すことが難しくないので今までのような災害保障をメインとしたいわゆる節税保険で勝負してくるのでしょう。

節税研究会としては、この保障を重視した長期平準定期保険であれば、経営者の保障も確保でき、積み立ても行えながら、保険料の40%を損金算入できるということで、このプランを推奨したいと感じています。

予測3.まさかの期間3年未満の全損保険

私の予測ですが、少しやんちゃな外資系保険会社(FWD富士生命、NN生命、マニュライフ生命)は、期間3年未満であれば、解約返戻率には関係なく全額損金の保険が作れますので、ここをついて期間3年未満の全額損金保険を開発するのではないかとも感じています。

加入時から1年後は解約返戻率0%、2年後は解約返戻率75%などの保険です。

ないとはおもいますが、2年11か月の保険をつくり、3年目返戻率を80%にして、3年後は失効をおすすめするような保険になるのではないかともおもっています。

この保険は、さすがに国税庁を刺激するので、可能性は低いとは思いますが、アグレッシブな保険会社であればこのような保険も開発するのでは、と感じています。また、この期間の短い保険は、責任準備金を計算するのが困難ですし、保険料が安価になってしまうので、おそらくこのような商品は販売しない可能性が高いと思います。

まとめ

今回のパブコメの内容通り、国税庁から通達がでれば、今までに加入した法人保険(節税保険)の経理処理は変更ありません。

また、これからの法人保険は損金算入割合は40%~60%に下がってしまいます。

ただ、今回の改定は本来の保険の実態に即した経理処理に変更されますので、結果的にはいいことだと思っています。

というのも、法人保険の中でも節税保険として販売されてきた保険は、保障もまともになく、返戻率が100%未満のものがほとんどなので、結果的に法人の資産を減らしてしまう上に、資金繰りを悪化させてしまい、万が一のときも保障がないということで、あまりおすすめできるようなものではありませんでした。

被害者が減るという意味でも今回のパブコメ通りに変更されるのは賛成ですが、保険会社も新しい節税保険の開発を行っていくと思います。

もし開発がされるとしても、本来の保障を重視した保険開発がなされることを期待したいと思います。

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