売り上げの計上を決算後にずらして節税をする2つの基準

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決算間際で節税を考えてるときに、さらに大きな売り上げが決算期までに計上してしまうと大きく利益が計上されてしまい、法人税の支払いに頭を悩まれてしまいますよね。

そもそも売上の計上タイミングについて検討したことがないという人も多いのではないのでしょうか。

請求書を作った時点で、「売上に計上しなければならない」とお考えの経営者も多いのではないかと思います。

実は請求書の発行は関係なく、売上計上の基準を満たしていれば売上は計上しなければなりません。

したがって、売上計上の「基準」を社内で規定しておかなければ、税務調査の際に税務署にとって都合の良い基準を前提に話をされてしまいかねません。

法人税を節税するには、 売上の計上タイミングは遅らせられるほうが有利になります。

今回は、このように決算期末に計上されてしまう売り上げの時期を翌期ずらすことで今期の決算対策を行い、節税をする手法を具体的にご紹介していきます。

現状の基準から売り上げの計上を遅くすることが可能であれば、より売り上げ計上の遅い基準の採用を検討していただきたいと思います。

また、売上の計上基準は一度決めた場合は継続して適用していかなければなりません。毎年都合良く変更することが出来ないので、その点には留意が必要です。

これから売り上げの計上のタイミングを遅くできる可能性のある基準をご紹介します。

売上計上の2つの基準

1.請負の場合

  • 物の引渡しを要する場合:その目的物の全部を完成して相手方に引き渡した日
  • 物の引渡しを要しない場合:その約した役務の全部を完了した日

例えば、工事業の場合は、その請け負った工事を完了させて、依頼者へ引き渡しを行った日となります。
その場合は、引き渡しの日を翌期にずらすなどの対策を行うこともできますし、引き渡し後にその依頼者において使用収益ができることとなった日とすることで、売り上げの計上を遅くすることもできます。

引き渡しが必要とならない場合、例えばコンサルティング業の場合は、コンサルティングの業務がすべて完了した時点で売り上げを計上するように規定することで、売り上げの計上を延長することが可能です。

関連通達:法人税法基本通達2-1-5(請負による収益の帰属の時期)

2-1-5 請負による収益の額は、別に定めるものを除き、物の引渡しを要する請負契約にあってはそ
の目的物の全部を完成して相手方に引き渡した日、物の引渡しを要 しない請負契約にあってはその約し
た役務の全部を完了した日の属する事業年度の益金の額に算入する。(昭 55 年直法 2-8「六」により改
正)

請負の場合は、相手方に目的物を引き渡した日をどのように確認するか、相手方に役務提供の全部を提
供した日をどう確認するかの方法を検討することで、売り上げの計上を遅くすることが可能です。

2.物品販売の場合

  • 出荷した日
  • 相手方が検収した日
  • 相手方において使用収益ができることとなった日
  • 検針等により販売数量を確認した日 等

この中で、もっとも売り上げの計上を遅らせることができるのは、「相手方において使用収益ができることとなった日」です。

例えば、機械メーカーの場合は、購入先に機械を据え付け、試運転をして使用可能な状態にした時点となります。

また、機械を完成させて納品した時点で売り上げが計上されるとすれば、納品日を延長するということもできます。

検針等により販売数量を確認した日という基準は、電気・水道・ガス等の販売を想定しています。これは決算日に検診をすべて行うのは物理的に難しいことが想定されるためです。

また、建設業やソフトウェア制作などの請負契約においては、着手の日から契約上の引渡し日までの期間が1年以上であり、かつ請負対価が10億円以上の場合は、工事の進捗度に応じて売り上げを計上することになります。

ただし、請負価額の2分の1以上が工事の目的物の引渡しの期日から1年を経過する日後に支払われることが定められているものを除きます。

関連通達:法人税法基本通達2-1-2(棚卸資産の引渡しの日の判定)

2-1-2 2-1-1 の場合において、棚卸資産の引渡しの日がいつであるかについては、例えば出荷し
た日、相手方が検収した日、相手方において使用収益ができるこ ととなった日、検針等により販売数量
を確認した日等当該棚卸資産の種類及び性質、その販売に係る契約の内容等に応じその引渡しの日とし
て合理的であると認められる日のうち法人が継続してその収益計上を行うこととしている日によるもの
とする。この場合において、当該棚卸資産が土地又は土地の上に存する権利であり、その引渡しの日が
いつであるかが明らかでないときは、次に掲げる日のうちいずれか早い日にその引渡しがあったものと
することができる。(昭 55 年直法 2-8「六」により追加)

(1) 代金の相当部分(おおむね 50%以上)を収受するに至った日
(2) 所有権移転登記の申請(その登記の申請に必要な書類の相手方への交付を含む。)をした日

物品販売の場合は、出荷した日より、検収した日、検収した日より使用収益で きるようになった日の方
が遅いが、遅くなればなるほど、その確認という問題が出てきますし、単に遅いからという理由ではなく、
引渡の日として合理的であると 認められる日でないといけないことにも留意してください。

また、売り上げ代金の50%未満を受け取り、残りを後日入金していただくことで売り上げの計上をずらすことも可能です。

売り上げの計上をずらして節税をする上でやってはいけないこと

この節税でもっとも気を付けなければならないことは「納品書や検収書の日付を改ざんする」ことです。

改ざんによる隠蔽が発覚した場合は、重加算税の対象となり、追徴税額の30%台のペナルティーを支払うこととなります。加えて、国税側で隠蔽のあった会社として記録が残るため、税務調査も短期間できますし、厳しいチェックがあります。

まとめ

売り上げの計上は、その売り上げがどのような種類の売り上げなのかによって、売り上げの計上を行う基準が異なるため、ケースごとに売り上げの計上を遅らせることができる基準を規定しておく必要があります。

また、決算日間近だけ売り上げ計上の基準を変えるなどの対応をすることは、税務調査での指摘事項となりますので、社内で売り上げの計上の基準を定め、長い期間その基準を適用し続けなければなりません。

加えて、納品書や検収書の日付を改ざんするようなことは決してしてはいけません。節税ではなく脱税となってしまいます。

ルールに則った上で、正しく売り上げの計上を遅らせて、節税を試みましょう。

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