経営者の方にとって、資本金は会社の1つのステータスとお考えの方もいらっしゃるかと思います。
しかし、節税をしようと考えるときには、資本金は少なければ少ないほど税制上有利になっているということをご存知でしょうか。
実は期末日時点の資本金や資本金等の金額によって税額や税率が変わる場合があります。
個別には色々な条件がありますが、資本金又は資本金「等」の額が少なければ少ないほど節税が出来るようになっています。
今回は資本金を見直すことで法人税の節税を行う方法を具体的に説明していきます。
資本金を見直すことで受けられる4つの税メリット
- 法人税:中小法人の場合は軽減税率の適用や各種の優遇策を受けることができます。
- 事業税:資本金の額が 1 億円超だと外形標準課税の適用、所得割に超過税率を課される自治体が
あります。 - 住民税均等割:期末の資本金「等」の金額によって税額が変わります。
- 住民税法人税割:資本金の額が 1 億円を超えると超過税率を課される自治体があります。
減資の手続は、公告というプロセスが必要なので 1 ヶ月以上の時間が必要になります。したがって、早めに
対応をしておく必要があります。
資本金をいくらに設定すべきか
資本金の金額が変わると、均等割だけではなく、他にも影響が出る項目がたくさん出てきます。そこで具体的にいくらに資本金を設定すべきかといわれれば、資本金1000万円未満です。
資本金には大きく3つの段階があります。
- 資本金1,000万円
- 資本金3,000万円
- 資本金1億円
それでは、ここからは資本金に応じた税メリットをお伝えしていきます。
1.資本金1,000万円未満
- 法人住民税の均等割
資本金を1,000万円にすることで法人住民税は低く抑えることが可能になります。
従業員数に応じても変わってきますが、東京都内で従業員数50名以下の場合であれば、法人住民税の均等割額は7万円、従業員数が50名を超える場合は14万円です。一方で、資本金が1億円を超えている企業で従業員数が50名以下の場合は29万円、50名を超える場合で53万円です。
資本金が異なるだけで、このように均等割の金額が変わります。
資本金1000万円以下で7万円⇒1億円越えで29万円ですので、22万円の節税となります。
(従業員数50名以下の場合で計算)
東京都特別区の具体的な法人住民税の均等割額は以下のリンク(PDF)に記載しています。
- 新設法人の消費税2事業年度免税
新規に法人を立ち上げる場合には、資本金1,000万円未満にすると、基本的には設立以後「2事業年度は消費税が免税」になります。
2.資本金3,000万円未満
資本金3000万円の法人は「特定中小企業者等」に該当します。
特定中小企業者等の主な特例は、「中小企業者等が機械等を取得した場合の特別控除」です。
- 中小企業者等が機械等を取得した場合の特別控除
中小企業者等が機械等を取得した場合、その取得価額の7%を法人税額から直接控除できる特例です。(法人税額の20%が上限)
また、資本金3,000万円を超える法人であっても所有権移転外リース取引により取得したリース資産については特別控除となります。
ただし、生産性向上に資する一定の設備については、資本金3,000万円超の法人であっても、税額控除が適用できます。
3.資本金1億円未満
資本金1億円以下の法人は「中小企業者」として、資本金1億円超の法人に比べ、税務上様々な特例が受けられます。
- 法人税の計算上、所得金額800万円まで軽減税率(15%)が適用できる
- 800万円以下の交際費は全額損金算入
- 30万円未満の備品を一括償却できる⇒この詳細はこちらでご確認ください。
- 特定同族会社の留保金課税の対象除外となる
- 欠損金の全額繰越控除が適用可能(9年)
- 欠損金の繰戻還付が適用可能
- 法人事業税の外形標準課税の対象外
- 法人住民税の均等割が少なくなる
資本金を見直すことのデメリット
資本金を見直すためには、株主総会の特別決議や債権者への公告等が必要です。
取引先、金融機関等にも影響を与える場合もありますので、資本金を見直すことの節税メリットと信用力低下などのデメリットなどを天秤にかけて、資本金の見直しを検討しましょう。
特に銀行のスコアリングでは資本金は評点項目に入っていますので、注意が必要です。
詳しくはこちらをご覧ください。
まとめ
資本金を見直すこと(下げること)で、様々な節税メリットがある分、見直すことでのデメリットもあります。
メリットもデメリットも踏まえて資本金の見直しを検討してみてください。
そして、資本金を見直す場合は、株主総会の特別決議や債権者への公告等が必要となりますので、ある程度の手続きを踏まなければならず、時間も必要となることを押さえておきましょう。